自家製モッツァレッラ。
イタリアのチーズ造りにおいてもその難易度の高さはダントツ。
安定剤を入れて、溶けたときにグ〜っと伸びるようにする事は
簡単ですがそれはしません。
モッツァレッラ造りは一度に大量のジャージー牛乳を使って
作ります。器具も念入りに洗浄、消毒します。
いまだに何回作っても非常に緊張しますし、酷いときには
食事がのどを通らなくなります。失敗を恐れすぎるのは
よくないですがそれぐらいの気持ちで日々向き合っています。
そんなモッツァレッラを
今日は少し深く掘り下げてみたいと思います。
チーズには様々な分類方法があります。硬さ、熟成、脂肪含量、原料乳、等々。
モッツァレッラは非熟成のパスタフィラータとイタリアで呼ばれる
熱を加えるとよく糸を引くタイプのチーズ。
本来モッツァレッラは水牛のミルクで作られていますが、年々希少になり、今では
牛乳から作られるものが主流となっています。
水牛のチーズを召し上がられた方もいらっしゃるかと思いますが、
水牛の乳には黄色い色素のカロチンが移らない為に真っ白なチーズになる事
をご存知でしたか?
今度機会がありましたら見比べてみてください。
さて牛乳には水分や乳糖、脂肪にタンパク質、ミネラル、ビタミン...等々
含まれておりますが、チーズのもとになる成分は主にカゼインという
タンパク質と脂肪です。
カゼイン分子はカルシウムと結びつき、ミルクの中に分散し浮遊しているが
乳酸発酵でミルクのphが下がり酸性になると、カゼインはカルシウムを離して
浮遊する性質を失いミルクは固まった状態になる。これがヨーグルトです。
また、乳酸菌は抗菌物質であるバクテリオシンを作り、腐敗菌を抑制し、
保存力を高めているのです。
これをカットして静かにかき混ぜてしばらく置くとカゼインが下に沈み、
液体を取り除くとチーズになる。このとき乳酸発酵だけでは日本の自然環境では微生物の力が弱いのでレンネットで固めています。
4つある仔牛の胃袋の第4胃から取れるレンネットという凝乳酵素が主流でしたが今は微生物レンネットが多く使われています。
仔牛の第4胃袋はキモシンという消化酵素が、仔牛が初乳を飲んでいるときにしか
出ない為に、ちょっと残酷ですが取り出されていました。
乳酸菌とは?
地球上にいるたくさんの微生物のうち、人間にとって有益な微生物のひとつ。
ある一種類の菌をさすのではありません。
棒状の菌ラクトバチルス属や、球状の菌ラクトコッカス属等に分類され、
生育に必要なエネルギーを得る為に、ブドウ糖や
乳糖を分解して乳酸を作り出す微生物の事をいいます。
これにより、食品の保存性が高まり、さらに乳酸菌のつくる乳酸やその他の成分により
食品の風味が良くなりさらにその成分が体の健康にも役立つのです。
乳酸菌
今から6千〜1万年前、西アジアで家畜利用が始まった頃から発酵乳が作られたと
考えられています。
日本では奈良時代に牛乳が利用され始め、酪、蘇、醍醐というヨーグルトや
チーズ、バターのようなものが作られていた事が分かっています。
また日本最古の医心書`医心方`に酪、蘇、醍醐の効用として
全身の衰弱を直し、便通を良くし、皮膚を艶やかにすると記されているそう。
まだまだ経験の浅い若輩者ではありますが、
モッツァレッラ造りに限らずチーズ造りは見えない菌と
いかに会話するかが大切かということだけは
日々痛切に感じております。
機械に頼らず最後は自分の感覚で
、見る、嗅ぐ、食べる、触る、感じる。
今お出ししているピッツァは、以前働いていたお店で巨匠から
叩き込まれた財産です。手取り足取り丁寧に教えてもらったことは
一度もありませんが、仕事への向き合い方や取り組む姿勢、考え方。
お店を離れてからそういうことだったのか..
と感じる事がたくさんありました。
今、モッツァレッラにもそういう姿勢で向き合っております。
今日より明日、より良くなっていたいと。